成田空港第一ターミナルの到着ロビー、午後三時。ベトナムから来るパートナーを待つ男性が、手元に封筒を抱えて立っていました。入管の呼び出しが万が一あった時のために、所得証明と招聘理由書の控えを全部持ってきている。その準備の良さが、二人の三年後の安定を決めたとも言えます。国際カップルの日本側手続きは、ラブストーリーとは別の、現実的な戦いです。二〇二六年時点での実務を整理します。
前提:どのビザで呼ぶか
アジア諸国から日本に来る場合、主に三つの選択肢があります。
- 短期滞在ビザ(観光・親族訪問・知人訪問):最長九十日。恋愛関係初期に使われる。
- 配偶者ビザ:結婚後。最初は一年、更新で三年、五年と延びる。
- 特定活動(告示外):婚約者として滞在するケースで、まれに認められる。
この記事では、結婚前後の実務に絞って話します。
短期滞在ビザの招聘
タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの国籍パートナーが観光目的で来日する場合、日本国籍の交際相手が招聘人になれます。
招聘人(日本側)が用意する書類
- 招聘理由書(なぜ呼ぶか、関係性、滞在スケジュール)
- 身元保証書
- 滞在予定表(日付別にどこで何をするか)
- 住民票(マイナンバーなし)
- 在職証明書、または納税証明書
- 所得証明書(直近一年分)
申請人(パートナー側)が用意する書類
- パスポート、写真、申請書
- 航空券の予約確認書(購入不要)
- 宿泊予定(招聘人宅でも可)
- 戸籍謄本、または出生証明書(国により)
書類を揃えてから、パートナーが自国の日本大使館・領事館に申請。審査期間は通常五〜二十営業日。国によって差があります。
招聘理由書は、フォーマットを埋めるだけでは足りません。二人がどう知り合い、どれくらいの頻度で連絡を取っているか、具体的な日付付きで書くほど、審査官の印象が変わります。
短期滞在中のお金の流れ
観光ビザでの滞在中、パートナーは日本で働けません。これを守らないと、次の申請が全て不利になります。招聘人(日本側)が実質的に全費用を負担する前提で計画してください。
- 往復航空券:三〜八万円(東南アジア→東京)
- 旅行保険:三千〜五千円/週
- 食費・交通費:一日五千円前後
- 観光・デート費:滞在期間次第
一ヶ月の滞在で、招聘側の持ち出しは最低でも二十万〜三十万円。これが二〜三回繰り返される関係が、結婚の現実的な前段階になります。
結婚までの流れ
短期滞在を二〜三回経験して、関係が固まってきた段階で、結婚の話が出ます。日本で入籍する場合と、相手国で入籍する場合で手順が違います。
日本で入籍する場合
- パートナーが自国で「婚姻要件具備証明書」を取得(日本語訳付き)
- 日本で婚姻届提出
- パートナーが一旦自国に戻る
- 日本の入管で「在留資格認定証明書」を申請(二〜四ヶ月)
- 認定証明書が下りたら、パートナーが自国の日本大使館で配偶者ビザを申請
- ビザ発給後、来日
相手国で入籍する場合
日本側でまず「婚姻要件具備証明書」を法務局または在外公館で取得し、相手国で婚姻手続き。その後、日本で婚姻届の報告的記載、以降は同じ流れ。
どちらを選ぶかは、相手国の婚姻手続きの複雑さで決まります。タイやベトナムは比較的書類が多く、日本で入籍するほうが早いケースが多い。フィリピンは特に手続きが複雑なため、専門家に相談することを強く推奨します。
配偶者ビザ審査で見られる点
- 交際の実体:出会いから入籍までの連絡履歴、写真、訪問の記録。SNSのDMのスクリーンショットも証拠になる。
- 経済力:日本側の年収が目安として三百万円以上(地域・家族構成により変動)。
- 住まい:二人で住める広さ、賃貸契約書。
- 面接:初回申請ではなくても、更新時に呼ばれることがある。
よくある不許可の原因
入管の統計では、配偶者ビザの不許可は申請全体の約十〜十五パーセント。主な理由は:
- 交際期間が短すぎる(半年未満は厳しめ)
- 日本側の収入証明が不十分
- 書類の整合性がない(住所、職場など)
- 過去の入管関連トラブル(オーバーステイなど)
サポート体制
行政書士に依頼する場合、費用は十万〜二十万円。書類の書き方、揃え方、面接対策まで含まれます。初回申請で書類不備を避けたいなら、費用対効果は十分あります。
来日後の最初の三ヶ月
パートナーが日本に配偶者ビザで着いてからの三ヶ月が、実は一番大変です。
- 市役所での転入届、マイナンバー、国保加入
- 銀行口座開設(外国人は審査に一〜二週間かかる)
- 携帯電話契約、在留カードの住所変更
- 日本語学習の計画
- 精神的な孤立への対策(同国人コミュニティへの接続)
感情と手続きを分ける
ビザの書類は、愛情を疑われる場ではありません。でも、審査官は書類から関係性を判断します。二人の間の感情を、手続きに翻訳する作業が必要です。
次の一歩としては、関係が半年を超えたら、招聘理由書の下書きを一度作ってみる。書きながら、二人の関係を俯瞰する時間になります。