国際遠距離の費用を計算しようとして、航空券、ホテル、食事まで表にまとめたリスト——誰もが最初に作るけれど、実際にはその三〜四倍の支出が、三年続けると発生します。以下、現役で国際遠距離を続けている十組のカップルに聞いた「計算に入れなかった支出」を、七項目で整理します。先に知っておけば、ショックを予防できます。
1. 生産性の低下による機会費用
時差九時間の相手と毎日三十分通話する。その前後の準備と余韻で、実質的に一時間半が「集中できない時間」になります。週五日で七時間半、月に三十時間。あなたの時間給が三千円なら、月九万円の機会費用。
これは目に見えません。でも、仕事のパフォーマンス、昇進の速度、フリーランスなら売上にじわじわ影響する。遠距離の三年目で「キャリアが停滞した気がする」と感じる人が多いのは、この積算です。
2. 通信費とサブスク
- ワイマックス、楽天モバイルの海外プラン:月三千〜八千円
- VPN(相手国のサービス視聴用):月千五百円
- 国際ギフトカードのサブスク(NetflixやAmazonのアカウント二国分):月二千円
年間十万円前後。国内恋愛には発生しない支出です。
3. プレゼントの輸送費
誕生日、バレンタイン、クリスマス、記念日。国際郵便で送ると、中身が五千円のものでも、送料が四千〜八千円。EMS、DHL、地元の郵便局で送り方もまちまち。
プレゼントの中身より、送料のほうが高いことに気づいた瞬間、「次の訪問で直接渡そう」と決めるカップルが多い。でも、それは相手が記念日に手ぶらだと感じる別のコストに変わる。
年間六〜八回の贈答+送料で、年合計五万〜八万円。
4. 第三国旅行の費用
お互いの国を行き来するだけでなく、年一〜二回、第三国で合流するカップルが多い。航空券、ホテル、旅行費用込みで、一回あたり二十万〜三十万円。年間では五十万円前後。
これを「二人の旅行費」と捉えるか、「遠距離維持の必要経費」と捉えるかで、気持ちが変わります。正直に言うと、後者の側面が大きい。
5. ビザ・滞在手続きの費用
- 行政書士・移民弁護士相談料:一回三万〜十万円
- 書類取り寄せ(戸籍、婚姻要件具備証明書など):一万円前後
- 翻訳費用:ページあたり五千〜一万円
- ビザ申請料:国により変動、一回一万〜五万円
結婚に向けて動き出すと、累計で十五万〜三十万円は覚悟が必要。
6. 精神的疲労の回復費
見えにくいが大きい項目です。三ヶ月ぶりの再会の後、別れた翌週の落ち込み。この時期に、普段なら使わないお金が動きます。
- 気晴らしの外食・飲み代:月一万円の上乗せ
- マッサージ・整体:月五千円前後
- 衝動的なショッピング:月一万〜三万円
- 心療内科やカウンセリング:月一万〜二万円(必要な場合)
月三万〜七万円の上振れ。これが三年続くと、百万円を超える場合もあります。
7. キャリア選択の柔軟性コスト
「相手に会いに行くために、有給休暇の取りやすい会社を選ぶ」「昇進すると長期休暇が取りづらいから断る」「相手の国での将来を考えて、日本語だけの仕事を避ける」。これらの選択の積み重ねが、年収の上昇を緩やかにします。
遠距離のパートナーがいなければ選んでいた転職や昇進を諦めた場合、五年後の年収差で百万〜三百万円の機会費用になることもあります。
合計の概算
- 明示的支出(航空券・滞在):年六十万〜百二十万円
- 通信・贈答:年十五万円
- 第三国旅行:年五十万円
- ビザ・手続き(結婚前提):三〜五年累計で二十万円
- 精神的回復費:年五十万〜八十万円
- キャリア機会費用:五年で百万〜三百万円
五年続けた場合の合計は、軽く見積もって六百万円、厳しく見れば一千万円に達します。
どう向き合うか
この金額を知って、遠距離をやめるかどうかは、あなたの判断です。ただし、一つだけ言えるのは:
「一人で抱え込むと、後で爆発する」
遠距離の費用は、二人で透明化して、毎月明細を共有する。どちらかが大きく負担しすぎると、三年目で不均衡が爆発します。両方の国の物価と収入を考慮して、公平な分担方法を設計する必要があります。
公平な分担の例
- 航空券は、各自が自分の分を払う
- 相手の国での宿・食事は、ホスト側が七割、訪問側が三割
- 第三国旅行は、半々
- プレゼントの送料は、送る側が負担(回数のバランスは気にしない)
コストの見返り
これだけのコストをかける見返りは何か。現役のカップル十組に聞いた答えで、一番多かったのは「自分一人では見られなかった人生の広さ」でした。
第二言語の獲得、相手の文化圏での人脈、海外での仕事のきっかけ、料理や音楽の幅。相手との関係そのものとは別の、副次的な資産が多く生まれます。
決断の時期
国際遠距離は、三年が一つの節目です。三年続いたら、次の五年の形を決める話し合いを始めてください。
- どちらかが移住する
- 第三国に二人で移る
- 現状を維持する(子どもを考えない選択)
- 別れる
どれを選んでも、遠距離のコストを知ったうえでの選択になります。
次の相手との通話で、一度、遠距離の家計簿を一緒に作ってみてください。数字は、愛情を壊しません。数字を見ないことが、愛情を壊します。